中途採用や転職が一般化している現代においても、なぜ企業は新卒採用にこだわるのか?
あなたは不思議に思いませんか?今回は、この内容について踏み込んでみます。
新卒採用を行う企業の目的や理由を多面的な視点でご紹介します。
なお、記事内容は、配信日時のものになります。この内容は、時間とともアップデートされる内容ですので、アップデートが間に合っていない場合はご了承ください。
組織文化・同質性の維持(社会学的・文化的視点)
同期という“文化的装置”
- 新卒で一斉に採用し、「同期」として育てることで、一体感やロイヤルティが醸成されやすい。
- 年齢やスキルが均質な集団なので、教育制度やキャリアパスが画一的に設計しやすい。
- 組織内に“社内文化”を浸透させやすい。
村社会型」組織との親和性
- 日本企業は依然として終身雇用的な文脈や年功序列の影響が残る村社会的構造があり、その中で“イチから育てる”文化が根強い。
- 新卒は「無垢で染めやすい」存在として、企業色に合った人材を育てられると考えられている。
長期的な人材ポートフォリオ戦略(人的資本投資の視点)
中核人材の“仕込み”としての意味
- 将来の管理職やキーパーソンを長期育成する前提で、新卒から投資する。
- 「即戦力」でないが、「将来戦力」として長期的なリターンを狙っている。
柔軟な配置・ジョブローテーションが可能
- 中途採用者は「専門職」としての採用が多く、配置変更に制約がある。
- 新卒は職務が固定されておらず、様々な部署での経験や適性の見極めが可能。
- 特に総合職採用では、ゼネラリスト的育成がしやすい。
採用コストの観点(長期的視点でのコストパフォーマンス)
新卒は初任給が安く、長期的には中途より安上がり
- 採用~育成までの初期コストは高いが、中途のように高い年収で即戦力を買う必要がない。
- 企業に長く定着すればするほど、採用コストは回収される構造。
中途採用市場の競争激化
- 専門人材の中途採用は競争が激しく、報酬も高騰しがち。
- 企業独自の育成で人材を確保したほうが安定的であると考える経営層も多い。
採用ブランディング・マーケティング的価値
優秀層との早期接点の確保
- 新卒採用を行うことで、優秀大学の学生との接点を維持できる。
- 就職人気ランキング上位に入ることは、企業のブランド力や認知度アップにも貢献。
採用活動を通じた情報発信
- 新卒採用は、「採用活動=広報活動」としての役割もあり、将来の取引先や消費者としての学生へのブランディング効果もある。
育成前提の人材マネジメントと教育制度との親和性
体系的な育成制度が整っている
- 多くの日本企業では、新人研修、OJT、メンター制度などが一連の流れで整備されており、「新卒を前提とした育成設計」がされている。
- 中途を多く採ると、この育成制度とミスマッチが生じやすい。
労働法制・雇用慣行の影響(制度的背景)
新卒一括採用という制度設計が残る
- 日本では、大学卒業後すぐに正社員になることが“常道”とされる制度設計になっており、「既卒・第二新卒」は企業側も、今なお、採用しづらい慣行が散見されることがある。
- そのため、企業も「良い人材を確保するには新卒しかない」と考えることがある。
企業の“人材ビジョン”との整合性
「人を育てて強くなる」企業哲学との一致
- 製造業や老舗企業などでは、「人を育てて会社を成長させる」という人的資本経営的思想が根強い。
- 自社で「教育し、育てること」自体が企業価値の一部とされているケースがある。
【8】若年層の柔軟な発想・DX適応力への期待
新しい価値観・技術への感度
- 若手は、デジタルリテラシーや最新の価値観(サステナビリティ、ダイバーシティなど)を自然に備えており、組織変革の触媒としての期待がある。
まとめ:新卒採用は「非効率」ではなく「戦略的余白」
たしかに、中途採用と比較すると「即戦力」ではなく、「コスト」もかかるように見えます。しかし、新卒採用は以下のような長期的・戦略的な“余白”や柔軟性を企業にもたらします:
- 組織文化の維持・継承
- 人材のポートフォリオ設計
- 自社色への染め上げ
- 若者市場との接点
- ブランディング
- 成長の“土壌”としての期待
企業にとっては「今の成果」よりも「未来の戦力」への投資と位置づけられているケースが多いのです。
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